大麻ヒステリー 思考停止になる日本人

 たかじんのそこまで言って委員会での東北野菜についての発言が話題になった、
中部大学の武田邦彦教授が大麻について書いた本。

大麻ヒステリー (光文社新書)

大麻ヒステリー (光文社新書)

大麻=麻薬と多くの日本人が認識しているが実は大間違いであること、
大麻はずっと、いろんな物を作る素材等として日本人の伝統的な生活の一部であったこと、
日本で生えていた種類の大麻には燃やしても精神に影響を及ぼすような作用はないのに、
GHQの圧力で現在の法律ができてしまったことへの批判、
抗精神作用があるのは大麻ではなくカンナビノールなのにそれが含まれていない種類まで
規制対象であることへの疑問(カンナビノールの含まれていない大麻を規制するのは、ノンアルコールビールでも飲酒運転とするようなもの)等々、現行法の問題点がくまなく指摘されています。


大麻と日本人の精神的伝統との関わりについての一例。p.106より引用。

 伊勢神宮で頒布されているお神札のことを、「神宮大麻」といいます。神社で使用されるお神札の中で、最も厳重なお祓いを行って授けられるものを、特に「大麻」と呼びます。ちなみに、この神宮大麻には、実際に大麻の繊維が入っていました。
 この神宮大麻の「大麻」は、もともと「おおぬさ」と読み、神々への捧げ物として、あるいはお祓いの際に用いられました。素材は、かつては木綿や麻などが、今は紙が用いられています。

ほんとになんでもUSAの言う通りにしちゃったんだね〜自国の伝統も宗教も顧みずに…(呆)


 それから、カンナビノールの精神的作用について(第四章)。
・インド大麻薬物委員会(1893年)
・ラ・ガーディア報告(1940年)
・世界保健機構(WHO)の報告書(1970年)
・シィーファ委員会(1972年)
等の、過去のカンナビノールの影響についての研究発表について言及されています。
上の4つの報告では、カンナビノールに恐ろしい中毒性があるというような意見は、一つもありません。WHOの報告書では、精神的依存性は指摘されていますが、それはアルコールのような身体的依存性とは異なり、「禁断症状はないので身体的にはいつでもやめられるが、吸わないと寂しいとか生活習慣になっているという精神的な理由で、昨日も吸ったから今日も吸いたいという傾向が認められる」という意味だそうです。


 それから、「罪のない人を犯罪者に仕立て上げてしまう大麻取締法のほうが犯罪的ではないか?」という問題提起がなされています。


最後まで読んでみると、武田教授が一番言いたかったのは、「大麻の問題を一つの素材として、日本人が自分の頭で考えるようにならなくてはならない」ということのようです。大麻は禁止が当たり前、と思っている人には、一度目を通して考えてもらいたい一冊。


というわけで、新書300冊計画の29冊目。