犬として育てられた少年 子どもの脳とトラウマ

 タイトルの「犬として育てられた少年」は、いくつもの収録されたトラウマを持った子供達の物語のうちの一つ。どの物語も、重たくて、大変で、読んでると怖くなってきたりしました。その中にキラリと光る、子供の勇気や優しさや回復力が救いになってはいるのですが。著者は精神科医ですが、かなり優秀な方と思いました。一人で働きかけるのではなく、多彩な専門家からなるチームを率いて治療に当たっています。こんな凄い仕事されてる精神科医がおられるのだな〜。


 ロシアの孤児院で、赤ちゃんや幼児に、本当にミルクあげるくらいの物質的に最低限のケアしかされなくて、いろんな脳の能力が発達しないまま成長して、3才の時にアメリカの里親にもらわれてきた少年。何か言語のようなものをしゃべるので、里親はロシア人を通訳にするが「これはロシア語ではない」と。もしかしたら東欧の国?と思って東欧諸国の通訳を使うが皆「これは私の国の言葉ではない」と。調べていくと、大きな空間にベッドを並べて放置されていた赤ちゃん同士が、互いにコミュニケーションを取ろうとする内に、意思疎通のための独自の簡単な言語を使うようになっていたことが判明。悲惨な環境なのは確かだが、言語学的に興味深いなあと思いました。


 知らなかったのですが、ネグレクトは影響が具体的に脳にあらわれ、それがMRI等によって確認できるそうです。小さい時のケアって大事なんですね。


精神科医、カウンセラー、セラピスト等、人の心に触れるお仕事の方、里親の方、子供時代の環境のことで心に傷をお持ちの方、今子育て中or将来子供を持ちたいと考えておられる方等に、一読をお勧めします。あと教育者の方にも。


犬として育てられた少年 子どもの脳とトラウマ

犬として育てられた少年 子どもの脳とトラウマ