大飯原発の加圧水型(PWR)原子炉ってどうなの?

 chida@Nutopiaさんが某所で書かれていた日記から、御本人の承諾を得た上で全文転載。


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加圧水型(以下PWR)原子炉はもともと原潜用に開発され、アイゼンハワー以後の米国が日本に売り込んだという経緯があるらしい。事故を起こした福島原発は沸騰水型(以下BWR)でPWRと基本構造が異なっている。どちらが安全かといえば、どっちも一長一短らしい。


PWRの簡単な構造は安全保安院のこの図(http://ow.ly/cpgpl)がわかりやすい(またはこの図:http://ow.ly/cpWx2)。これを見ると、この図の下にあるBWRとの構造の違いも比較できるし、福島事故前後の対策の違いもわかる。
BWRとの最大の違いは冷却水が一次と二次に分かれていること。放射性物質で汚染されている一次冷却水がそのまま格納容器から配管でタービン建屋に出るBWRとは異なり、PWRでは放射性物質で汚染されている冷却水は基本的に格納容器内に隔離されている。正常運転時はPWRのほうが安全性が高いと言えると思う。


問題点1:蒸気発生器(http://ow.ly/cpguz
この写真からわかるように、蒸気発生器は見るからに複雑な構造をしている。冷却水が一次と二次に分かれているために熱効率が悪く、そのために原子炉内の圧力を高くして冷却水を沸騰させずに温度を高くし、一次配管を細くして熱効率を上げている。この細管は直径2cm、厚さ1.3mmという薄くて細い管で、約3300本も溶接されている。だからPWRでは細管破断事故が最も懸念される事故であり、過去にも発生している。ただし、蒸気発生器は4系統あり、二次系に放射性物質が漏洩した系は閉じて残りの蒸気発生器で冷却を続けることができるようです。


問題点2:高圧高温の一次冷却水
PWRの原子炉内はBWRより高圧高温の一次冷却水が循環する(160気圧、300℃)。そのため、細管破断などで一次冷却水喪失事故が発生すると、激しい勢いで漏水、高圧なので注水が困難、ところが減圧すると沸騰してさらに水位が下がるなど、さまざまな問題が発生しやすい。


問題点3:格納容器の問題
PWRの格納容器はBWRの5倍程度の容積があり、構造も強固なので福島事故のように圧力容器(原子炉)が破壊されても格納容器の密閉性が十分に維持されると言われている。これは一理あるが、問題もある。まずPWRの格納容器には窒素が封入されていない。建屋で水素爆発した福一とは異なり、BWRは格納容器内で水素爆発する可能性があるということ。次にベント管がない。メルトスルーが起こり高温のデブリが底のコンクリートと反応すると大量の水素と水蒸気が発生するので内部の圧力は想定外に高くなると思われる。そうなると、最悪の場合は格納容器が爆発するか、福一の場合のように爆発を免れたとしても配管などの弱いところから大量の放射性物質が漏れることになる。


PWRのECCS(非常用炉心冷却装置)(http://ow.ly/cpW28)。


PWR型の主な事故:
関電美浜原発2号炉の細管ギロチン破断事故(1991年:http://ow.ly/cpgG8)。PDF:http://ow.ly/cpRUt
関電美浜原発3号炉の一次冷却水喪失事故(2002年:http://ow.ly/cpSnp
関電美浜原発3号炉の二次系配管破損事故(2004年:http://ow.ly/cpT6v)。経緯(http://ow.ly/cpTkO)。
日本原電敦賀2号炉の一次冷却水噴出事故(1999年:http://ow.ly/cpSnp


大飯原発について:
1. 燃料はウラン燃料でMOX燃料ではない
2. SFP(使用済核燃料プール)は格納容器の奥(陸側標高約30m)にあり、3/4号炉に1230/1315体の使用済核燃料が保管されている(容量各2129体)。1400ガルを超える地震でSFPのプール損傷(冷却水喪失)の可能性あり
3. 格納容器内の水素に関する関電の説明:平均水素濃度ドライ条件は13%で(水素爆発が起こる濃度)、(大飯3/4号炉は計算上)全炉心の75%のジルコニウムが酸化して水素が発生しても12%で基準内だから水素制御装置は設置していない。どうも恣意的。なぜなら、米国の基準は全炉心の100%のジルコニウムから水素が発生するとしてドライ条件は10%(米国基準なら設置義務ありなので、再稼働のために甘い基準を作成した疑念あり)


大飯原発安全性評価(専門的)(PDF:http://ow.ly/cq6dK):
P.11:原発の仕様
P.116〜118:断面図など
P.120:イベントツリー(事故時から冷温停止までのフローチャート




感想:
PWR型の過去の事故の記録を読めばわかるけど、偽装や嘘の報告、そして冷却水が漏れているのに運転し続けたり、とても危険な原発の運転を任せられるような企業体質でないのは東電と似たり寄ったりです。PWRの特徴から言えることは、細管破断事故や一次冷却水の喪失が最も懸念される(危険度の高い)事故ですね。
また、免震棟、ベント設備、水素制御装置など、福一の事故を踏まえた対策が、再稼働を急いだためにまったく実施されずに先送りになったことは明白。


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いつか止まる日まで、それは案外すぐかもしれないし、随分先かもしれないけど、どっちにしても最後まで事故を起こさずお仕事を全うできたらいいねえ・・・