遺品整理屋は聞いた! 遺品が語る真実 消せなかった携帯の履歴、孤独死のサイン、女の遺し物…

 著者は、日本初の遺品整理業を立ち上げた人。
孤独死した人などの遺品の整理に、一万件近く関わってこられたという。
つまり、日本の孤独死者の遺品整理の第一人者と言えるだろう。


聞きなれない業種なので、著者の説明をp.3から引用しておこう。

 遺品整理業とは、亡くなられた方のご遺品を、遺族に代わって(あるいは、ご遺族と一緒に)整理し、ある物は処分し、ある物は遺族に形見としてお届けし、またある物は、僧侶を呼んで供養(遺品供養)して天国の故人の元へお送りするのが主な仕事です(これを私たちは「天国へのお引越し」のお手伝い、と呼んでいます)。

僧侶を呼んで天国の故人の元へって、仏教に天国はないと思うんだけど、宗教学者じゃないし、そこはアバウトでもOKなんでしょう、多分。


 さて、本の内容だけど、一冊丸ごと著者の吉田太一さんが仕事で出くわしたケースのレポートである。
ショッキングな自殺現場の話から、心あたたまる昔の洗濯機との出会い、飼い主も母猫も亡くなっていた部屋で生きていた「子猫」の話まで、いろいろ載っている。
著者によると、時には遺品から声が聞こえてくるように感じられることもあるそうだ。
夫が亡くなって一年たって、ようやく夫が大好きだったソファーを処分する決心がついた話も載っていて、なんだかグリーフ・ワークにも通じるプロセスだなあと思ったりした。


亡くなられた方に対しても、遺された物に対しても、著者の暖かい視線を感じるのである。
キーワードのように飛び込んでくる、"自殺"、"絶縁"、"天涯孤独"、"溺死"、"首つり自殺"、"餓死"、"硫化水素自殺"、"排ガス自殺"、"孤独死"、"死臭" などと言った、恐ろしげな単語に怖くなって、途中で本を閉じたくなるかもしれないのだけど、亡くなられた方とご遺族のために一生懸命その現場を整理しようとする著者の仕事ぶりに、若干の救いを感じさせられたりもする。


新書300冊計画の39冊目でした。