刑期増やせば犯罪減るのか?

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040730-00000114-yom-pol

 法制審議会(法相の諮問機関)の刑事法部会は30日、凶悪犯罪に対する刑罰の強化を柱とする刑法・刑事訴訟法改正案要綱を了承した。併合罪など複数の罪による有期刑の上限を20年から30年に引き上げるほか、「集団強姦(ごうかん)罪」を新設することなどが主な内容。法務省は9月に同審議会の答申を受けて秋の臨時国会に改正案を提出し、年内の施行を目指す方針だ。(読売新聞)

 人殺して金盗ろうかって時に、懲役20年ならやるけど、懲役30年なら辛いからやらねえよって人間がどれだけいるのだろうか?ものすごく疑問に感じるのである。10年長く刑務所に入れれば、10年分多く税金から犯罪者のためにお金を支払わなければならないのである。そしてもし30年たってシャバに出てくればこれはもう浦島太郎間違いなしだ。たとえば1974年から外の世界を見ずに過ごして今日突然世間にもどってきたらどうなるだろうか?犯罪者の中には社会にうまく適応できなかった方も多いと思うのだが、ただでさえ適応できなかったのに、30年もの時を越えていきなり適応できるものだろうか?改心したかどうかとかの問題以前に、1974-2004のギャップはあまりに大きく、発狂しそうになるくらい再適応は難しそうだ。そうしたら、結局は生活保護を出さざるを得なくなってしまうだろう。さもなければ彼らは再び犯罪を犯して刑務所に戻ってくるかもしれない。飢え死にするよりは、刑務所で御飯をもらったほうがいいと考えたとしても、不自然ではない。ここでも再び税金が使われることになる。その分他に回されるべき予算が少なくなることは言うまでもない。

 なんだか無駄すぎる。あまりにも無駄金すぎる。

 一方、所得水準が下がったり失業率が上がれば犯罪が増加することは非常によく知られているのに、雇用を増やしたり所得水準を確保するような方向性の政策は政府はとりたくないようだ。もちろん豊かな社会でも犯罪は起こるが、貧しい社会のほうがずっとたくさんの犯罪が起こるのである。生活に困る人の数をできるだけ減らすことこそ最良の犯罪予防策であると考える。マイケル・ムーアの"Bowling for Columbine"http://www.gaga.ne.jp/bowling/top.htmlで弱者切捨て型のアメリカ社会と福祉がしっかりしているすぐ隣のカナダが比較されているから、それを観ればよくわかる。カナダでも銃を所持することが可能であるにも関わらず、銃による殺人はアメリカよりもずっと少ないのだ。

 凶悪犯罪の増加を厳罰化で食い止める方法論のもう一つの問題は、警察の検挙率が下がっていることだろう。捕まえなければ厳罰を科すことはできないし、往々にして犯罪者は自分は捕まらないと信じているものだ。それに、もうどうなってもよくなって犯罪に走る者も増えるだろう。自殺はできないけど、人殺しで死刑にされるなら死ねるかもしれない・・・そんな者には厳罰化も何の役にもたたない。

犯罪増加の原因がなんなのか、もうちょっと熟考し、それに従って法案を考えるべきかもしれないと思った。