華氏911

 梅田のナビオTOHOプレックスにてマイケル・ムーア監督、主演ジョージ・W・ブッシュ(爆)の華氏911を観てきた。内容自体は「おい、ブッシュ、世界を返せ」という本とほとんど同じ。酷評させてもらうと、社会的意義は高いがリズム感の悪い映画である。ボーリング フォー コロンバインやアホでマヌケなアメリカ白人で見せた肩にカメラ担いで巨漢マイケル・ムーアが突進していくというお約束の名シーンもあまり見られない。かなり体重の重たいマイケル・ムーアだが、さらに重たい911イラク戦争の現実に、重さ負けしてしまった感がある。BGMも暗いのと明るいのがかわりばんこなのだが、暗く陰気なピアノ演奏のBGMが長すぎて、重たさばかりが強調される。

 そう、現実が重たく悲しすぎて、マイケル・ムーアのユーモアやウィットと言った良い持ち味が活かされきれていないのだ。ブッシュ秘密暴露ネタにしても、量・質ともに過剰すぎて(無論これ自体はムーアのせいではないのだが)、笑いを通り越して投げやりなどうしようもなさを感じてしまう。政治家のスキャンダルというのも、ほどほどなら笑えるが行き過ぎると笑えなくなってしまう。それが現在世界最強の軍事力と経済力を持つ国家のものであればなおさら。

 笑うために観に行くのなら、ブッシュの馬鹿さ加減を積極的に笑おう!というアクティブな態度が必要だ。こんなやつが政権を取れて、戦争まで起こせてしまうのが現実の世界なのだ・・・とか真剣に考え出しては映画は楽しめなくなってしまう。

 オーソン・ウェルズの言葉を引用し、映画の最後で語られる、「戦争が起こされる本当の理由」もショッキングな内容だし。ええ、もちろん、本当の理由は「他国に勝ちたい」でもなければ「国を守るため」でもないのです。米政府、あるいは全ての政府が本当に敵とみなしているもの、兵を失っても大金を使っても戦争を続けなければならない理由、それは・・・映画を観てのお楽しみ☆。

 お勧め度・・・「おいブッシュ、世界を返せ!」を読んでいたら、内容は大体同じなので、別に観なくてもいいかも。でも、あの本の内容を知らなかったら一度は観ておく価値のある映画だと思います。ブッシュを馬鹿にして嘲笑いたい人、ブッシュのせいで直接的あるいは間接的にストレスがたまっている人、戦争ジャーナリズムや風刺が好きな人、平和運動等に関心のある人、小泉純一郎自民党イラク問題における対米追従外交に対する反対の根拠を見つけたい人にはお勧め度☆☆☆☆☆。