今夜、すべてのバーで

今夜、すベてのバーで (講談社文庫)

今夜、すベてのバーで (講談社文庫)

 あまりに有名な作品ながら、なぜか昨日まで読んでいなかったのです。
小説なのか自伝なのか、自伝的小説なのか。中島らもアルコール依存症についての知識の豊富さには
驚かされます。そしてそれだけの知識がありながら、ず〜とずぶずぶと酒漬けであり続けた在り方は印象的。
アル中になるには、内臓が強くなくてはならないという説には説得力があります。


病院での入院者同士の会話の描写とか、やっぱり劇団の人であり、明るい悩み相談室のらもさんなんだなあと。
流れるような日常の会話の中に、何箇所もボケと突っ込みを連続で入れながらも脱線せずに物語は進んでいく。
職人芸的ですらあります。後半部、安易な家族物語で締めたところが、ちょっと欲求不満。