イエスの言葉 ケセン語訳

イエスの言葉 ケセン語訳 (文春新書)

イエスの言葉 ケセン語訳 (文春新書)

 ケセン語とは、気仙沼のおとなりの岩手県気仙地方の方言のこと。
なんと、聖書をケセン語に訳してみようという大胆な試みである。
この本には、聖書の有名な文章のいくつがケセン語に訳されて掲載されている。
それがケセン語にもそれ以外の東北弁にも全然親しみのない私にも、
心に響いて感じられるのが不思議である。


たとえば、こんな一文。それに著者のエッセイがつく。このエッセイもまた深い。
医師として、東日本大震災津波の被害の中、懸命に働いてこられた著者。
その中での人間模様や、いろんな人達との出会い等が描かれている。


ケセン語に訳するにあたって、既存の聖書の日本語訳から離れ、
ギリシャ語やヘブライ語に遡って考察したり、
現代医学の観点から、聖書の物語を考え直したりしているので、
ちょっと慣れ親しんだ聖書と違う、という方もいるかもしれない。
しかし、それはもしかしたらこれまでの解釈の方が間違ってた可能性もあるし、
一度既存の見方を脇に置いて、新しい解釈にも心を開いてみるのが良いのではないかと思う。


不思議に心に響くケセン語のリズムを感じ取ってみるだけでも、素敵な体験である。
一読をお勧めできる一冊。


新書300冊計画の40冊目でした。