半地下の家族じゃなくて半地下の靴屋のおじいさん

  ロシア作家の本も一度読んでみたいと思いつつ、分厚さや長さにためらいがちだったのですが、図書館で見つけたこの本は、すぐ読めそうだったので借りて読んでみたのでした。

愛あるところに神あり (トルストイの散歩道)

愛あるところに神あり (トルストイの散歩道)

 

 思っていたとおり、これは一日で読めるトルストイ
あとがきを読むと、トルストイが民衆の言葉で民衆に語りかけていた時期の民話の形の物語ということで、難解な文学は敬遠してしまうタイプの人でも大丈夫な一方、収録されている全話を通じてとてもキリスト教的な宗教観の元に成り立っているので、そこで好みが分かれるかもしれません。キリスト教のみならず、普遍的な人間のあるべき姿が描かれているとも言われています。

トルストイが読みたいけど、時間や忍耐力はあまりないという人におすすめ。多少説話的で説教くさいところはありますが。

 表題作の主人公、靴屋マルティン・アウジェーイチは往来に面した窓が一つあるだけの小さな地下室に住んでいて、その窓から人々の通るのを見たりするのですが、足しか見えないけれども長年しっかり仕事をしている靴屋だから履いている靴で当人がわかるという設定。

窓から外が見えると地下といっても半地下かな。「パラサイト半地下の家族」という韓国映画が最近流行していましたが、時代と国を問わず貧しい人は半地下の部屋に住まわせられがちなのかもしれません。