暗闇と恐怖

 人が暗闇と直面した時に感じる恐怖は、暗闇そのものが持つ危険性に対する恐怖というよりも、己の内面、あるいは無意識下にある何かの恐怖のイメージが、暗黒という名のスクリーンに投影されていることが多いという。

 たとえば、私の場合は暗い夜中の街を自転車で走ったり歩いたりしていると、誰かがどこかから銃で狙撃してくるのではないだろうかという恐怖を感じる。取り立てて狙われているわけでもない私が、しかも銃社会のアメリカですらなく、東大阪や柏原でそんなことを感じるのは変である。私だって理性ではそんな心配は不要であるとわかっている。安全運転してくれないドライバーの乗っている車の心配はしないといけないけど。

 つまり、私の無意識には「銃に対する恐れ」があるということだ。だから外部に何もなくても暗闇に直面した時にはその恐怖が湧きあがってくるのだ。暗闇に直面した時、怖いと感じた時、何がこわいのか、それを知ることは興味深い。そこが本当に何も存在しない漆黒の闇であったとしても、幽霊への恐怖を無意識に持つ人は幽霊を恐れ、暴力への恐怖を持つ人は暴漢や犯罪者を恐れ、動物への恐怖を持つ人は野犬や熊がいないかと恐れるのだ。

 あなたが怖いものはなんですか?