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昔の紀伊國屋書店の採用マル秘資料

 昭和58年3月5日の衆議院での話ですが・・・
衆議院会議録情報 第098回国会 予算委員会第四分科会 第2号

○土井分科員 法整備について精力的にお取り組みになっている段階で、具体的な事例で好ましくないものが出たときには、行政をお預かりになっていらっしゃる立場からすると、これは全く無関心ではおれない問題であろうと思われるのでありますが、どのように措置をお取り扱い願えるかということは、この問題を申し上げた後でひとつ承らせていただきたいと思います。


 すでに一部新聞紙上でも出ましたが、書店でございますから文化を売るということが仕事の内容になってまいります。文化の最先端と申し上げてもいいような仕事だと思うのですが、この名前を具体的に申し上げますと、紀伊国屋書店の中で、実はこれは内部で出されておりますマル秘の判こがついている資料がここにございます。一つは「女子社員採用にあたって留意すべきこと」というものでございます。あと一つは「パートタイマー採用面接に際しての注意事項」というものでございます。この二つに分かれております文書、私がこれを口頭で申し上げるに先立って、ひとつ現物をごらんいただいて、それをごらんになっていらっしゃる途次、私はそれをさらに御説明申し上げることが適当かと思われます。


 主査、ここでこの文書を大臣並びに局長に御提示したいと思いますが、よろしゅうございますか。


○白川主査代理 どうぞ、許します。


○土井分科員 これをごらんいただきまして、まず1のところをおあけいただきますと「女子社員採用にあたって留意すべきこと」「企業は人なり。そして採用は高価な買物である。良いもの、良く育つもの、適正に長もちするものを選び、粗悪品、欠陥品を掴まされてはならない。」と書いてあるのですが、(「全くひどいや」と呼ぶ者あり)粗悪品、欠陥品という表現からいたしますと、採用を希望して来られる方々について、どうも品物呼ばわりをすでにされているようなことでございますが、これは好ましいか好ましくないかという問題じゃもはやございませんで、こういうことが許されていいか悪いかの範疇に入る問題であろうかと私は思うのです。


 さらに「採用不可の女子」というのが(8)項目ここにございますが、「(1)ブス、絶対に避けること。(2)チビ、身長百四十センチ以下は全く不可。(3)カッペ、田舎っぺ。(4)メガネ、(5)バカ、(6)弁が立つ、新聞部に属していたものはよく観察すべし。(7)法律に興味をもつ、 前職・専攻課目・関心事に注意。(8)慢性の既往症、再発の怖れだけでなく、疲労し易いので不満を抱き易い。」こう書いてあるのです。


 これは(8)項目にわたるのですが、それはごらんいただいたらおわかりになるように、明らかに女性に対しての差別感というものが背後になければ、採用不可の女子の中にこういう(8)項目というのは考えられないだろうと思うのです。


 さらに「要注意の女子」という大きな項目で言うところの二は、全体がこれは(9)項目からなっておりまして、その中の(1)は「革新政党支持」と書いてあるのです。「その理由を質問し、その答え方の口調に注意」と書いてあるのですね。(2)は「政治・宗教団体に関係、頭のきりかえのきかないのが多い」と書いてあるのです。(3)は「本籍が日本国籍でないもの、特に家が飲食店の場合は不可」と書いてあるのですね。(4)は「職を二つ以上変っているもの、流れ者であり即戦力になるように思えても長つゞきしない」と書いてあるのです。(5)は「四年制大学中退者」、(6)は「家庭事情の複雑なもの」、(7)は「父が大学教授」これはだめ
だというのです。(「では、おれも資格がないな」と呼ぶ者あり)(8)は「尊敬する人物が情熱的芸術家の場合」これもだめだと言われるのですから、文化を売られる仕事からいたしますとどういうことに相なるかと思うのですが、「ゴッホ林芙美子石川啄木」というのが例として挙げてあるのです。(9)は「尊敬する人物が学校の先生の場合、 どういう点を尊敬するか質問すること」こう書いてあるのです。


 ここまでの段階でもうすでにはっきりおわかりいただけますように、言うまでもなく女性差別というのがあると同時に、憲法十四条ではさらに認めることのできない、憲法十九条からしても認めることのできない思想差別についての問題もやはり出てまいります。それからさらに、民族差別についての問題も出てまいります。


 こういうことが相重なりておりますけれども、基本的には、「採用不可の女子」というので、女性に対しての採用を問題にする場合に留意すべき事項として掲げられている中身でございますから、こういうことが歴然とマル秘文書として社内にあるということはいかがかと思うのです。こういうことが白昼堂々とまかり通っているということは黙って看適すべき問題ではございません。局長、これをどのようにお考えになりますか。

 採用不可の女子の8項目が特にひどいですね。


(1)ブス、絶対に避けること。
(2)チビ、身長百四十センチ以下は全く不可。
(3)カッペ、田舎っぺ。
(4)メガネ、
(5)バカ、
(6)弁が立つ、新聞部に属していたものはよく観察すべし。
(7)法律に興味をもつ、 前職・専攻課目・関心事に注意。
(8)慢性の既往症、再発の怖れだけでなく、疲労し易いので不満を抱き易い。


 現在も女性の社会進出という点では批判されることが多い日本ですが、今改めて昭和の時代を振り返ると、信じられないくらい価値観にギャップがあるように思えます。もし今、同じようなことをしてる企業があって、それが発覚したら・・・即座に炎上必至ですね。