福島県在住の芥川賞作家にして禅僧の玄侑宗久が平成二十三年の神無月に書き上げた本。タイトルの通り、メインテーマは方丈記なのだけど、平成二十三年といえば2011年で、2011年の福島といえばやはり震災と原発事故の影響が非常に大きな時期。天災・人災続きだった鴨長明の人生が、311後の福島で生きている著者の人生と相似形のように感じられたことでしょう。正に無常を実感しながら生きておられた様子が、読む側にもひしひしと伝わってきます。
政府には、除染は徹底して行ってほしい。元の土地に帰ることができないのであれば、代替地も各市町村ごとに用意してほしい。しかし、同時にわれわれは、そんな願いも思い込みなんだ、執着なんだと考える修行に励みましょう。環境は環境として、心だけは風流にありたい。中道を行きたい。(p.62~p.63)
また、巻末の方で著者が提唱する「コンパクトな自治、小さなコミュニティ」は、今後南海トラフ大地震を体験することになるかもしれない私達にとっても大きな課題かもしれません。もし生き残ったらの話ですが。