ちょっと遊びに行ったり住んでる程度だと、普段意識したりはしないのだが、
奈良には結構難読地名や、考え出すと「どうして?」って思うような地名が多い。
自分はあまりちゃんと考えるほうではないのだけれども、
この本の著者のような人にとっては、奈良とは巨大なパズルのようなものなのかもしれない。
- 作者: 谷川彰英
- 出版社/メーカー: ベストセラーズ
- 発売日: 2010/04/09
- メディア: 新書
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第一章 「春日」に隠された謎
第二章 神武天皇の足跡を地名で追う
第三章 神社名から「奈良」の歴史を解き明かす
第四章 現代に生きる奈良仏教
第五章 峠を越える
第六章 奈良の難読・おもしろ地名
第七章 「奈良」に集まる・「奈良」が消える!
まず第一章から、飛鳥や春日と言ったメジャーな地名に真っ向から取り組んでいる。
著者は飛鳥については「三輪山を中心にした山容説」をとっている。
そして、春日の由来は霞(かすみ)であるという意見。
第二章では、神武天皇の足跡を地名に着目しての検証。
日本書紀に記述のある、墨坂の戦いと忍坂の戦い、そして大和の平定。
この章の舞台は、宇陀、桜井、橿原と言った奈良中部のあたり。
第三章は神社名の由来が中心。
大和神社,往馬神社,葛城一言主神社,談山神社,相撲神社,氷室神社,吉野水分神社について語られている。
第四章、今度は奈良のお寺。まず東大寺と対をなす名でありながら、寺自体はメジャーとは言えない西大寺の名誉回復。
「持戒の聖者」叡尊・忍性がハンセン病患者など、虐げられた人々を救済しようと貢献したことが取り上げられている。
p.114には、
忍性は、重病のため動けないでいる患者を、明け方には奈良坂に迎えに行って自ら背負って奈良の市の乞食に連れていき、夕方にはまた背負って奈良坂にまで帰したという。
と書かれている。1200年代の話だから、まだ今のようにハンセン病は感染しないという医学的知識がなかった頃だ。
今までガトー・ド・ボワの向かいのお寺という認識しかなかった私。ごめんね、西大寺。
西大寺の後は、帯解寺,壷阪寺,大安寺,吉田寺と続いている。吉田寺はぽっくり寺として有名。
第五章は、「峠を越える」。天然の要害とも言える奈良盆地、あちらこちらに峠がある。
激坂の代表格として、自転車乗りの間でも名高い「暗峠」を初めとして、竹内峠、芋峠、平城山のことが書かれている。
著者は暗峠を「国道だから大丈夫ですよ」と言われて自動車で登ってしまったようだ。さぞかし怖い思いをされたことだろう…。
ちなみに、名前の由来としては、「鞍ヶ嶺峠」と呼ばれていたのが、松や杉が繁って峠付近が暗くなり、「暗峠」になったそうだ。
芋峠、名前の由来は芋が取れた峠ということではないと書かれている。
この場合の「いも」とは疱瘡(天然痘)のことで、疱瘡から守ってもらうことを祈願して、
「いもあらい地蔵」という地蔵様が橿原神宮前駅近くに祀られているそうだ。
もちろんこれは奈良に限ったことではなく、京都府久御山町の難読地名には、
「一口」と書いて「いもあらい」と読むというのもある。難読の中でもかなり難しい部類ではないかと。
第六章は奈良の難読地名特集。
京終,杏,鵲,箸中,忍阪,磐余,海拓榴市,多武峰,雲梯,忌部,櫟本,御所,掖上,秋津島,當麻,榛原,壱分,国栖,立里,十津川
さていくつ読めますか?自信を持って読めたのが8つしかなかった私…orz
第七章の最初は、奈良盆地に存在する日本各地の旧国名。わかりやすい例をあげると、桜井市の「出雲」や「吉備」のような地名。
その次は、明治九年に「奈良県」が「堺県」に合併された後、明治十四年に「堺県」が「大阪府」に編入され、
明治二十年に大和国の多くの人々の陳情・要求により「大阪府」から独立を勝ち取るまでの11年間、
「奈良県」は消えたままだったというお話。この本には、"これは一種の独立革命であった"(p.234)と書かれている。
個人的には、奈良県が大阪府に編入されたり道州制で近畿州になっても全然かまわないような気がするが、
明治時代には一生懸命奈良県の独立(?)のためにがんばった方々もおられたのだろうか。
歴史好き、奈良好き、難読地名好きのどれかに当てはまるなら、是非一読をお勧めしたい一冊。
というわけで、新書300冊計画の14冊目でした。