ふしぎなキリスト教と同じく、橋爪大三郎と大澤真幸の名コンビによる仏教講座。
仏教をジャズ・セッション的に縦横自在に論じたいといった趣旨。
p.7では、
この対談は、キリスト教についての対談で用いた方法を継承している。つまり、私大澤の方が、仏教の外から、批判的にーつまりいささか意地悪にー問う役割を引き受け、橋爪さんは、どちらかと言うと、仏教の側からこれに応答する、という形式が対談の基本的な設定になっている。
両者ともに宗教家ではなく社会学者であり、特に橋爪氏は、宗教社会学の立場から、研究したり語ったり書いたりしているので、西洋哲学やキリスト教神学との比較が多く見られるのが、お寺のお坊さんや、仏教学者の書いた仏教書と、ひと味違うところでしょうか。
だからこの本は、究極の悟りを求めて探求の旅に出たいとか、もうすぐ家族が死にそうだからお葬式やお寺のことを知っておきたいとか、死の病の床についていて魂の救いを求めたいとか、そういうニーズに直接的に応えるものではないのです。
ここを勘違いすると、本代返せって思うことにもなりかねないので、別の本を探された方が良いかなと思います。一つの宗教として、仏教を他の宗教と比較しながら楽しく論じている本です。
しかし逆に、仏教の特定の宗派にのめり込んでいたり、家が仏教だけど「何か変だぞ、お坊さんの言うこと辻褄合ってないぞ」と感じている方が、ある種のセカンドオピニオンのようなものを持つには、良い本かも知れません。
・預言者とブッダの違い
・神と仏の違い
・仏教とヒンドゥー教の違い、そして仏教がカーストからの解放において持つ意味
・初期の仏教
・人間が苦を取り除く仏教と神が罪を取り除くキリスト教
・永遠の生であるキリスト教の「神の国」と永遠の死である仏教の「ニルヴァーナ」
・サンガと在家の関係
・仏教における積極的自由とは何か
・慈悲とは何か
・大乗のロジック
・多仏の思想
・極楽予備校説
・空とはなにか
・発心について
・唯識について
・タントリズムとは
などなど、様々な話題を網羅して語られているのですが、この本の価値はずばり、語り方が面白いことに尽きます。
一つだけ例をあげますが、p.216の
"神が絶対だと納得するのに、偶像も必要ない。どんな話があるかというと、五十六億年生きていたなどとは言わないで、リヴァイアサンをやっつけたと言う。リヴァイアサンといったってワニの大きいくらいの怪物で、簡単にやっつけられるかもしれないんだけど、その程度のことで話がすんでしまう。"
のところなど、もろ笑いのツボに入りました。確かに大きなワニ程度だったら、武器持ってきたら勝てそう・・・(笑)
ジャズセッションみたいな本なので、ジャズ喫茶的に珈琲でも飲んで音楽でもかけながら、楽しく読むのが合っています。
- 作者: 橋爪大三郎,大澤真幸
- 出版社/メーカー: 株式会社サンガ
- 発売日: 2014/01/15
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なお、お葬式やお墓や法事や戒名といった、やたらお金のかかる現代日本仏教への疑問や非難と言った内容は書かれていませんし、初期仏教だけが本物!みたいな話でもないので、お坊さんは檀家さんがこの本読んでても、別に心配する必要はないかと思います。逆に言えば、お寺さんにお金使いすぎの家族を止めたい人が、家族に読ませても、あんまり役に立ちません。そういう人には、島田裕巳さんの本なんかの方が良いでしょうね。
- 作者: 島田裕巳
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
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- 作者: 島田裕巳
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- 作者: 島田裕巳
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この対談を読んで、橋爪氏の↓の著書も読んでみたいなと思いました。
- 作者: 橋爪大三郎
- 出版社/メーカー: サンガ
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新書300冊計画の44冊目でした。つーかこのシリーズ、コンプリートすることを諦めているような気がしなくもない今日此の頃でございます。