明治維新から現在に至るまでの日本の人口政策についての本。
少子化という言葉が、現代日本社会を語るキーワードのようになってる昨今だけど、国家が人口を人為的にコントロールしたがるのは、ずっと前から続いていることだというのを理解させてくれることが、 この本のいいところ。
人口を増やせといってみたり、増やすなといってみたり、方向性はその時代で変わるのだけど、国は常に都合よく国民に要求を押し付けようとしてきたのだなと思った。
たとえばp.85で紹介されている、1939(昭和14)年に、厚生省の民族衛生研究会がまとめた「結婚十訓」など、当時の大日本帝国の思想が透けて見えるようである。
一、一生の伴侶に信頼できる人を選べ
二、心身ともに健康な人を選べ
三、悪い遺伝のない人を選べ
四、盲目的な結婚を避けよ
五、近親結婚はなるべく避けよ
六、晩婚は避けよ
七、迷信や因習にとらわれるな
八、父母長上の指導を受けて熟慮断行せよ
九、式は質素に届けは当日
十、産めよ殖やせよ国のため
優生思想ではないかという批判があると思うが、この時代の日本は優生思想にどっぷりつかっていて、この十訓も、
中外商業新報の10月四日付によると、民族衛生研究会が行った優生結婚についての専門家メンバーによる座談会の議論を踏まえて、ドイツの結婚十訓に倣い「優生学上から見た新時代の結婚十則をつくる」とある。
と紹介されている。
そうかと思えば、1974(昭和49)年には日本人口会議が、「子供は二人までに」という提言を出していたりして、むしろ少子化のほうがやばくね?と言われるような時代になっても撤回されることもなく、そのまま今日に至るということらしい。
終わりの方では、民主党政権時代の子供手当その他の政策や鳩山首相の発言等を一通り批判した後、安倍首相が本気で人口減少対策に取り組み始めました!という論調になっているのは、やはり産経新聞論説委員さんだからだろうか。後3年すれば安倍政権が終わるし、その時にでも安倍政権の取り組みが有効であったかどうか、じっくり確認したらいいだろう。
本当にここまでアメリカの都合に影響されて日本の人口政策が決められてきたのだろうかと、疑問に思う部分もないことはない。嘘だ!と言ってるのではなくて、本当だとしたらなんと情けない話だろうかという意味で疑問に思う。